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iPhone15Proの冷却とNeural Engineの速度について

Neural EngineによるDNNの推論を連続して行った際に、発熱などの影響により時間が経つにつれ処理速度が低下する現象がみられます。将棋AIの大会にiPhone 15 Proで出場することを想定し、iPhone 15 Proで使えるスマートフォン用冷却ファンを購入したので、冷却の有無と処理速度の関係について計測しました。以前iPad(第9世代)で同様の実験を行った際は、冷却がない場合とサーキュレータによる冷却でほとんど差がみられませんでした。以前とプログラムはほぼ同じですが、機種、冷却方法、気温が異なります。

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ベンチマーク

  • 機種 iPhone 15 Pro (iOS 17.0.3)
  • 気温 26℃
  • 冷却方法
    • 冷却無し(木製の机の上に端末を置く)
    • スマートフォン用冷却ファン
    • サーキュレータを上向きにし、その上に端末を置く
  • 計測内容
    • 将棋用CNNモデルを推論する(モデルの説明はこちら)。1回の推論が完了したら直ちに同じデータでもう一度推論を行う。
    • バッチサイズ64
    • Neural Engineを利用
    • 10秒ごとに、直近の10秒間で推論できたサンプル数を出力
    • 測定は10分間

スマートフォン用冷却ファンはAccpo製のものです。Amazonで2099円で購入しました。正確な商品名がわかりませんが、商品名の箇所に「Accpo スマホ 冷却ファン 熱対策 クーラー ペルチェ素子 【2023革新モデル・3秒 半導体 急速冷却】静音 小型 軽量 USB type-c 給電 実況専用 伸縮クリップ Phone(5-7.5インチ)等多機種対応 持ち運びが容易 ゲーム、ビデオ鑑賞、生放送、写真撮影などさまざまな状況に適しています」と記載されています。

スマートフォン用冷却ファンの装着状態

サーキュレータはコンセントに接続して使用するもので、強力な風が得られます。

サーキュレータによる冷却

結果を下図に示します。凡例noneが冷却無し、circulatorがサーキュレータ、coolerがスマートフォン用冷却ファンに対応します。

Core MLベンチマーク結果

サーキュレータが最速で、次にスマートフォン用冷却ファン、最も遅いのが冷却無しとなりました。最後の1分間の平均速度を計算すると、4721、4642、4347となります。以前のiPadでの実験と異なり、冷却手段が処理速度に影響することがわかりました。また、定量的な温度測定はできないものの、端末を手で触ったときに暖かさを感じます。処理速度だけでなく、バッテリーの劣化も懸念されるため将棋ソフトの運用時には冷却をしたほうがいいという結論になりました。ただし、サーキュレータは音が大きいこと、振動が大きいためスマートフォンにそれが伝わらない対策をすべきであると考えると(特に選手権会場に持ち込む場合に)不便です。スマートフォン用冷却ファンを使うのが妥当な策だと考えられます。

関連情報

こちらの動画でも、iPhone 15 Pro Maxを冷却したほうがベンチマーク結果が良いと報告されています。

iPhone 15 Pro Max is throttling! Should you care? - YouTube

冷却ファンの感想

今回購入した冷却ファンについて少しだけ紹介します。パッケージは以下の通りでした。

商品外観

箱の中には透明で開閉できるプラスチック製の箱が入っており、冷却ファン本体、USBA-USBC電源ケーブルと緩衝材が入っています。持ち運ぶ際にこの箱がそのまま使えるのが便利そうです。

パッケージ内容

スマートフォン側の接触面です。商品説明ではペルチェ素子が入っているようです。

スマートフォン側の接触

取付用の爪が自立してくれるので、将棋ソフトを動かすだけならこの姿勢で運用できます。充電ケーブルを挿すと重みで倒れてしまうので、固定しないと見栄えが少し悪くなりますが。

スマートフォンに取り付けた状態

音はデスクトップパソコンのファンとあまり変わらない印象です。選手権の会場に持参して運用するのに十分な仕様だと思います。