2026年5月3日~5日にかけて開催された第36回世界コンピュータ将棋選手権に参加ソフト「ねね将棋」で参加しました。
ねね将棋としての参加は2024年の第34回以来です*1。2024年はiPhone上でソフトを動作させ、スマートフォンの性能を示すことをテーマにしていましたが、今回はスマートフォンでやれるネタが尽きたため、普通のパソコンで動作するソフトとして参加しました。構成が大きく変わったため、差分ではなく今回の構成をそのまま紹介します。
ソフトの構成
今回の目玉は、「評価関数のブレンド」という仕組みを新規開発したことです。
8種類のNNUE評価関数を用意しておき、対局中に自分の手番が来るたびに、それらを最適な比率でブレンドして1つのNNUE評価関数をその場で生成します。生成した関数を使って通常のNNUEベースの探索を行います。ブレンド処理には0.1秒程度かかりますが、その後は通常のNNUEを用いた探索なので探索部のオーバーヘッドはありません。ブレンド比率を決めるモデルとNNUE評価関数をend-to-endで学習する仕組みも合わせて実装しました。
技術的な詳細はアピール文書をご参照ください。
定跡は新ペタショック定跡 233万局面を使いました。当初はブレンドの仕組みをそのまま見せるために定跡なしにしようと思っていたのですが、テスト対局してみると初手の2六歩か7六歩かで悩んで64秒も消費することが判明しました。定跡の知見が乏しいこともあり、公開されている定跡をそのまま使うことにしました。
ハードウェア
GMKtec製、EVO-X2を使用しました。CPUはAMD Ryzen™ AI Max+ 395で、16コア32スレッドです。この機種の特徴は、CPU用RAMとVRAMの合計が128GBで、その配分を変えられる点です。VRAM 96GBの設定をすることでLLMの動作に役立ちます。しかし今回はCPUのみで動作するソフトを作成したため、VRAM割り当ては1GBとし、置換表に112GB割り当てました。OSはWindows 11です。Chromeリモートデスクトップを用いて、会場のノートパソコンから自宅に設置したマシンに接続しました。
大会概要
| 項目 |
内容 |
| 大会名 |
第36回世界コンピュータ将棋選手権 |
| 日程 |
2026年5月3日(日)~5日(火・祝) |
| 会場 |
川崎市産業振興会館(神奈川県川崎市) |
| 一次予選 |
37チーム、変則スイス式8回戦、上位10チームが二次予選へ |
| 二次予選 |
28チーム(一次予選通過10チーム+シード18チーム)、変則スイス式9回戦、上位8チームが決勝リーグへ |
| 決勝リーグ |
8チーム、7回戦 |
決勝リーグ進出チーム(二次予選終了時順位順):Ryfamate、氷彗、dlshogi、奏乗、水匠、六角堂狸、ponkotsu、AobaZero。
最終順位は優勝:氷彗(初出場初優勝)、準優勝:Ryfamate、3位:dlshogiでした。
戦績
ねね将棋は一次予選からの参加で、一次予選は37チーム中3位となりました(6勝1敗1分)。
二次予選では一次予選から上がった10チームとシード18チームの合計28チームで争い、10位となり敗退しました(5勝4敗)。次回大会のシード権を取得しました。
大会中に受けた質問
Q:評価関数が手番ごとに変わるということだが、置換表はクリアしなくていいのか?
確かに、置換表に保存された局面評価値と最新の評価関数との整合性が取れない懸念があります。今回はクリアしない仕様としました。理由は2つ:置換表のクリア自体にも時間がかかること、そして評価関数のブレンド比率は滑らかに変化するため不整合は小さいと想定したことです。
印象に残った対局
一次予選4回戦 ねね将棋 - 氷彗
棋譜リンク
今回優勝した氷彗と引き分けることができました。意図して引き分けを狙ったわけではなく、結果的に幸運な引き分けでした。
二次予選2回戦 芽生将棋 - ねね将棋
棋譜リンク
劣勢の局面から突然の逆転勝利でした。
二次予選4回戦 ねね将棋 - やねうら王 with GTNET
棋譜リンク
ねね将棋のベースとなっているやねうら王に勝てたことはうれしかったです。
二次予選最終戦 ねね将棋 - 二番絞り
決勝リーグ進出がかかった最終戦でしたが、いいところなく敗れてしまいました。
感想
iPhoneでソフトを動かしていた2024年と比べて、今回は直接的に強さを高めることに注力しました。手元での短い思考時間での評価ではあまり良い出来ではなかったのですが、大会では思いのほか健闘でき、望外の結果でした。
決勝リーグには進めなかったのは残念ですが、先手勝率の高さを支える定跡の知識を持ち合わせておらず、仮に進んでもよい結果にはならなかっただろうとも思っています。今後は手法のブラッシュアップを続けながら、将棋AI大会に臨んでいきたいです。
対局してくださった方、運営の皆様に感謝申し上げます。
ソースコード
学習済み評価関数も含め、以下に公開しています。
https://github.com/select766/shogi-nnue-experiment-2026/releases/tag/wcsc36
やねうら王の内部にonnxruntimeを組み込み、ブレンド比率を計算するCNNもエンジン内で推論する仕組みになっています。Windowsバイナリを用意してあるのでビルド不要で動かしてみることは可能ですが、動かし方の説明は省きます。Claudeに聞いてください。
実装は主にClaude+Codexで行いました。コーディングエージェントがなかったら、このようなend-to-end学習機構を一人で作るのは難しかったと思います。
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