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第33回世界コンピュータ将棋選手権の結果(2023/05/03)

2023年5月3日~5日にかけて開催された第33回世界コンピュータ将棋選手権に参加ソフト「ねね将棋」で参加しました。

今回のねね将棋はiPad上でNNUE型(計算コストの低い評価関数で大量の局面を読む)とDL型(計算コストの高い評価関数で少量の局面を読む)の合議に挑戦しました。今回注力した部分は特殊なコンパイル環境を整えるという現物合わせの要素が大きいですが、大きなテーマは、モバイル端末の性能をできるだけ生かしてどこまで強い将棋ソフトが作れるかを検証することです。技術的なことは以下の記事をご覧ください。

select766.hatenablog.com

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アピール文書

大会会場で設営した状態はこのようになります。iPadMacbookをLightningで接続して充電とインターネット共有を行い、Macから対局サーバへ有線LANで接続しています。iPad側で思考していますが画面は地味ですみません。

ねね将棋を大会会場で設営した状態

戦績

一次予選からの参加で、一次予選は28チーム中2位となりました。二次予選では一次予選から上がった10チームとシード18チームの合計28チームで争い、23位となり、ここで敗退しました。

対局内容

優勝争いと異なり、予選では棋力が拮抗する対局はかなり少ないです。その中で、ponkotsu戦、いちびん戦は盛り上がりました。

WCSC33 一次予選 ねね将棋-ponkotsu
WCSC33+L5_27-900-5F+nene+ponkotsu+20230503143529

WCSC33 一次予選 いちびん-ねね将棋

WCSC33+L7_26-900-5F+ichibin+nene+20230503162558

感想

一次予選では、思考エンジンがやねうら王ベースであり好成績を残すことができました。二次予選では、強力なマシンを利用しているチームが多く、さすがにiPadの性能では振るいませんでした。iPad上でのNNUE型エンジンのNPS(1秒間の探索局面数)が160万程度であった一方、クラウド上の強力なマシンを利用したソフトでは1億に達する場合もありました。私の目標は、一般家庭にあるようなハードでどこまで行けるかを検証することですので、それを見せるという点では十分な成績だと考えています。

合議システムの実装ミスでクラッシュ・反則負けになるチームがよくみられるため、ponderを実装しないなど保守的な実装にとどめました。その結果トラブルなくすべての対局を終えることができ、安心しました。

対局してくださった方、運営の皆様に感謝申し上げます。

ソースコードGithubで公開しています。動作させるにはMaciOS/iPadOS環境が必要です。

github.com

github.com

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今後

iPad上でNNUE型とDL型を合議させるというコンセプトですが、現状のハードウェア性能のバランス上NNUE型がDL型より強く、またNNUE型はかなり完成されているため努力で改善できる余地が少なそうです。 DL型の計算に用いるNeural Engineの性能は新しい機種での向上幅が大きいことが期待できます。秋にiPhone15が発売され、その性能が良ければDL型の工夫によって棋力を高められるかもしれません。新機種の性能を確認してから来年の方針を考えたいと思います。