技術書典5 振り返り(準備編)

2018年10月8日に、池袋サンシャインシティにて同人誌即売会「技術書典5」が開催されました。 この記事は、私が同人誌即売会に人生初のサークル参加を行った当イベントの記録を残すものです。

なお、頒布物はBOOTHにてオンライン販売しておりますので、今からでもご覧いただけます。 https://select766.booth.pm/items/1023247

出展経緯

机の向こう側に行きたい

私が初めて同人誌即売会に参加(購入側として)したのは、2010年夏のコミックマーケットコミケ)だったはずです。 最初に買ったのが何だったかは残念ながら忘れてしまったのですが、回数を重ねるたびに、ただ見て回るだけでなく「机の向こう側に行きたい」という気持ちが強くなりました。

技術書典

コミケはあまりに広大でどこから手を付けていいやらわからないという感じだったのですが、近年になって技術書典が開かれ、専門のIT技術をベースに何か出展できる可能性を感じました。 石橋を叩いて渡るタイプの人間なので、いきなり本を書いて印刷して売る、という作業を全部やるのは不安でした。そのためまずはコンテンツ自体を書く能力があるのかということを自分自身で試しました。 その結果が2017年12月にネットで公開した記事になります。

select766.hatenablog.com

無名の人がマニアックなPDFを公開しただけなので評判などが聞こえてきたわけではないものの、自分自身では一応行けるという感触を得ました。 第4回(2018年4月)の開催案内が出た際にはぜひ出展したいという気持ちが固まっていたのですが、本業の都合でそれどころじゃなさそうだったため見送ってしまいました。 6月20日に第5回の開催案内が出て、今度こそ挑戦してみることにしました。

出ると決めた後

同人誌を書くということそのものが目標だったので、ネタ自体にこだわりはありませんでした。 しかし、コンピュータ将棋の同人誌といえば山岡さんや澤田さんといった強力な人たちがいるので、あえてそこに割り込むよりは別の話題にすることにしました。 そういうわけで、少なくとも日本語圏では見かけない、ポケモン人工知能で解くネタを発表することにしました。 7月19日が応募締め切りだったので、それまでに発表内容の骨子ができれば、と思っていたのですが、技術的に難航して達成できませんでした。 今回の話題は既存のソフトウェア等の使い方の解説ではなく、学術論文に近い新たな技術の開発になるので、技術部分で失敗すると語るべきものがない事態に陥ります。 それでも「出したいから出す、締め切り駆動だ。」という精神で応募してしまいました。 人生いつ死ぬかわからないし、自分自身はいくら気を付けていても親族の介護などどうしようもない事態が起きて好きなことができなくなるかもしれません。 最悪のケースでも前年末の記事を改訂して印刷すれば体裁は整えられるので、応募しない理由がありませんでした。 一方で即売会に出展するというのは初めてのことがたくさんあるので、本のコンテンツのクオリティは頑張るものの、他の部分は保守的に進めました。

研究開発

今回の本の話題は、ポケモンバトルの戦略を人工知能技術で開発するというものでした。 まずはゲームのシミュレータ開発から始めました。データ構造の検討、技の仕様の情報収集など結構骨の折れる作業でした。 イベント当日に複数の訪問者から、「シミュレータを作るのが大変だったでしょう」と言われましたがまさにその通りです。

シミュレータができた後、そこに乗っけるAI部分の開発を行いました。 提案手法がそもそも良い成績を出せるのかというところが非常に不安でした。

執筆

8月23日、一部の実験が完了し、最低限語るべき内容ができました。本の執筆にとりかかりました。 取り急ぎ、カタログに印刷されるサークルカットの納入が8月末までということだったので、Windowsのペイントで作りました。 目を引くイラストを載せている人も多いのですが、私にはそういうスキルは欠けています。 文字情報だけにしても、何が書かれた本なのか最低限わかるように注意して作りました。 PowerPointなどで作れるともう少し楽だったのですが、ピクセル数でサイズが決まっているためうまく作れませんでした。 ラスタ画像の作り方に関するスキルをいずれは磨いていきたいところです。

9月3日、本文執筆開始。マークアップ言語として、技術系同人誌に向いていると思われるRe:VIEWシステムを使うことにしました。 ひたすら文字を書いて、9月19日に9割方執筆が完了しました。 一度書いただけだと論理関係が破綻していたり誤字脱字の嵐だったりするので、紙に印刷してファミレスで赤ペンを走らせました。 漢字変換のミスは商業出版でもよく見かけるので、この作業は非常に重要です。

その後図版などを作成し、最終調整をしました。図の位置がずれる問題が生じていたのですが、Re:VIEWコンパイル組版)環境としてセットアップが楽なdockerを使用していたため、ちょっと面倒な事態に陥りました。 コンパイルするたびにソフトウェアパッケージをインターネットからダウンロードするようになっており、レイアウトのパラメータを1個変えて試行錯誤するたびに1分程度かかったり、パッケージのサーバが一時的に落ちて作業不能になったりしました。環境は要改善です。 最終的にできたPDFをコンビニのプリンターで印刷し、数式や図が消えたり文字化けしたりしないことを確認しました。 最後に表紙をWordで作りました。例によってかっこいいイラストは描けないので主張点の箇条書きという形になりました。 イベント当日に周りを見るとカラー表紙が多く、見劣りした感じは否めません。

入稿

印刷所への入稿は私にとって未知の領域です。印刷所の選定ですが、印刷物の直接搬入ができる「ねこのしっぽ」か「日光企画」から選ぶことにしました。 Webサイトが初心者にわかりやすかったねこのしっぽを選びました。 印刷数を検討しました。9月20日時点で、技術書典サイトの被チェック数が25でした。twitterで過去のイベントでの売れ行きについて調べたところ、50冊は売れそうという感触でした。 印刷方式としてオンデマンドとオフセットがありましたが、オフセットが金銭的にお得なのは300部以上なので、オンデマンドにしました。 「オフセ本」という響きには憧れるのでいつかオフセット印刷にも挑戦したいですが、ジャンルを変えないと無理でしょう。 印刷部数の入力で、最初に予定した50部に見本用などの予備を足した60部にしようと思ったのですが、50・80・100という数でしか受け付けられなかったので80部にしました。 なお、当日はそのうち70部頒布しました。 見積もりの段階でページ数が確定している必要があるようでした。漫画本だと早い段階で決定する項目かと思いますが、TeXベースの技術書だと容易に変動するので実質的に原稿が完成した後でないと見積もりができません。 表紙・本文ともモノクロ印刷にしました。

表紙をどうやって入稿すればいいのか最初わかりませんでした。背表紙に印刷したり、紙の端まで色を塗るような場合には表紙・裏表紙がつながった大きな画像として作る必要があるみたいです。 今回はそこまで手が出せませんでしたが、単純に表紙・裏表紙に相当するB5サイズのPDFをWordで作り、hyosi_omote.pdf, hyosi_ura.pdfという名前で入稿すれば期待通りの印刷になりました。 本文はRe:VIEWで作成したPDFをそのまま入稿しました。印刷方式によりページ数が2の倍数または4の倍数である必要がありますが、今回は偶然はじめから条件を満たしていました。 紙質などの選択もできたのですが、よくわからないので標準的なものを選択しました。9月22日に入稿完了、10%割引期間内でした。

準備

本の入稿が終わり、それ以外のイベント準備を始めました。 本自体は当日会場へ直接搬入なので、中身の確認はできません。印刷が想定通りできていることを祈るだけです。 頒布の計画として、紙の本が売り切れておしまいになるのはもったいないので、電子版を用意することにしました。 一般参加側として、何度となく完売・救済策なしという自体に遭遇して残念な思いをしたのでそういうことが起きてほしくないと思いました。 技術的には、単にPDFをダウンロードするためのURLやパスワードを書いた紙を頒布することで実現します。 配る紙は名刺状のカードにしているサークルが多いようです。 ねこのしっぽの名刺印刷を使おうかと思ったのですが、PhotoShop形式での入稿が必要のようで、PhotoShopは持ってないし使ったこともないので諦めました。 ビジネス向けの名刺作成サービスのカスタマイズの範疇で実現するという手もあると思います。 今回は紙の本を頒布することをメインとして、ほかは最低限で済ませることにしました。 そのため、しおり状の普通の紙に必要な情報を書いたものを用意しました。 コンビニで印刷し、カッターで裁断しました。この方式なら最悪当日に不足しても生産可能です。

頒布価格等の設定ですが、読者の立場に立って考えました。 46ページ、モノクロの紙の本であれば500円が妥当なところです。 電子版を付けるのは特にコストがかからないので、利便性のために紙の本を買ったら電子版も入手可能という形にしました。 一方で紙の本は持ち帰るのが面倒なので電子版だけのほうがいい、という人もいると思いました。 そうしたときに、電子版単体が紙の本と同じ価格だと、損をした気分になるかと思い電子版は少し安くすることにしました。 特に紙の本が完売した後で選択肢がない場合は顕著です。 1冊当たりの印刷コストが250円程度であることを考慮し、紙の本+電子版は500円、電子版単体は300円という設定にしました。

頒布物以外に、100均でテーブルクロスや本立てなどのグッズを購入しました。また、twitterで数ページ分の画像と共に告知を行いました。 この辺の準備に関する情報は技術同人誌を書こう! アウトプットのススメを参考にしました。

当日編(執筆中)に続きます。