技術書典5 振り返り(当日編)

技術書典5に出展した「ヤマブキ計算所」の記録です。 前の記事からの続きです。当日のことを書きます。

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売り子

同人誌即売会で出展するのは初めてで、ワンオペは大変だと聞いていました。そのため売り子さんを呼びました。 昔からの知人で、コミケに出展したことがあり、今回の題材であるポケモンも知っているという人材です。 日帰り圏内とはいえ遠方なので、交通費+最低時給相当の数万円を謝礼として支払いました。

入場

サークル入場は行列もなくすぐにでき、設営を開始しました。 印刷所からの段ボールが来ていたので開封の儀を執り行いました。 印刷は期待通りできており、自分の本が完成した感動がありました。

質素ですがこんな感じで設営できました。 f:id:select766:20181015092201j:plain

周囲のサークル配置は深層学習系が集まっていました。特にゲームAIが3連続で、将棋、ぷよぷよポケモンの並びでした。細かい部分まで含めて配置されていたのが好印象でした。

頒布

11時に開場・頒布開始です。入り口から比較的近い場所だったからなのか、はたまた機械学習系が人気なのかすぐに人がたくさんやってきました。 一瞬売り子に任せて混む前に周囲のサークルのものを買っていたら、自分のサークルの最初の1冊が売れるのを見逃してしまいました。惜しいことをしました。

支払い方法として現金と技術書典公式の「かんたん後払い」を用意していました。最初のほうに来た人は結構「かんたん後払い」を利用されました。 事前にアプリを入れておく必要がありますが、意識が高い人が多かったのでしょう。 人は多かったとはいえ、秋葉原で開催していたときより空いていて動きやすそうでした。

内容に関するコメントもいただきました。本文ではさらっと書いていたのですが、(ゲームのルールの)シミュレータを作る部分が大変だよね、ということに気づいてくれた人が数人。 チョットデキル人との対話は楽しいですね。

技術書典なので、電子版単体でいいという人も多いかと思ったのですが紙の本のほうが大幅に売れ行きが良かったです。 予想よりはるかに売れるのが早く、1時間半ほどで紙の本が完売。持っててよかった電子版。

12時10分時点の売り上げ記録です(かんたん=かんたん後払いを利用)。70冊の紙の本が売切れようとしているところで電子版単体は5冊しか出ていませんでした。 f:id:select766:20181015093202j:plain

完売後、電子版が売れ始めました。14時ぐらいまでは結構忙しい感じでした。16時台はほとんど来ないか、立ち読みしても買わない人が多い感じでした。 一方、紙の本がないと分かるとあきらめる人もいたので若干機会損失でした。

最終的に紙の本70冊、電子版単体79冊が売れました。ここまで売れるとは想定外で、100冊印刷しておけばよかったです。

17時になってイベント終了、撤収となりました。

内側からの気づき

同人誌即売会に一般参加者としては何度も参加したことがあるのですが、サークル参加は初めてでした。出展側になって初めて気づいたこともいろいろあります。

  • 見本を数分かけてじっくり読む人がいる。
  • 目次が結構見られる。
  • カップル等で連れ立って行動している人が結構いる。一人が立ち読みするともう一人はやることがなくなるので、およそ複数人行動は不便なイベントだと思う。
  • モノクロ表紙は少ない。見劣りした。デザイン自由度が上がるほか、印刷だと結構コストが上がるので悩みどころ。
  • (最後の1時間の)16時台はほとんど売れない。このジャンルに興味があって来ている人はもういないのだろう。

売れ行き記録

売れた冊数の時系列推移を記録していたので発表します。売上表を不定期に撮影しておいて、タイムスタンプから照合しました。

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紙の本は一気に完売、電子版は終了近くまで単調に売れるという結果でした。

さいごに

サークル参加すると決めてから、初めての作業がたくさんあり苦労しました。 それでも満足いく本を作ることができ、しかも完売させることができました。大満足です。

今回の本の話題はここで終わりではなく、継続して研究するつもりでいます。 一方で追加で分かったことを本にした時には読者に前提知識が必要となるため、展示即売には向かない懸念もあります。 まずは研究を進めて、イベントの際にはまた考えることにします。

主催の皆様、イベントに来場された方々、どうもありがとうございました。良いイベントになりました。

技術書典5 振り返り(準備編)

2018年10月8日に、池袋サンシャインシティにて同人誌即売会「技術書典5」が開催されました。 この記事は、私が同人誌即売会に人生初のサークル参加を行った当イベントの記録を残すものです。

なお、頒布物はBOOTHにてオンライン販売しておりますので、今からでもご覧いただけます。 https://select766.booth.pm/items/1023247

出展経緯

机の向こう側に行きたい

私が初めて同人誌即売会に参加(購入側として)したのは、2010年夏のコミックマーケットコミケ)だったはずです。 最初に買ったのが何だったかは残念ながら忘れてしまったのですが、回数を重ねるたびに、ただ見て回るだけでなく「机の向こう側に行きたい」という気持ちが強くなりました。

技術書典

コミケはあまりに広大でどこから手を付けていいやらわからないという感じだったのですが、近年になって技術書典が開かれ、専門のIT技術をベースに何か出展できる可能性を感じました。 石橋を叩いて渡るタイプの人間なので、いきなり本を書いて印刷して売る、という作業を全部やるのは不安でした。そのためまずはコンテンツ自体を書く能力があるのかということを自分自身で試しました。 その結果が2017年12月にネットで公開した記事になります。

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無名の人がマニアックなPDFを公開しただけなので評判などが聞こえてきたわけではないものの、自分自身では一応行けるという感触を得ました。 第4回(2018年4月)の開催案内が出た際にはぜひ出展したいという気持ちが固まっていたのですが、本業の都合でそれどころじゃなさそうだったため見送ってしまいました。 6月20日に第5回の開催案内が出て、今度こそ挑戦してみることにしました。

出ると決めた後

同人誌を書くということそのものが目標だったので、ネタ自体にこだわりはありませんでした。 しかし、コンピュータ将棋の同人誌といえば山岡さんや澤田さんといった強力な人たちがいるので、あえてそこに割り込むよりは別の話題にすることにしました。 そういうわけで、少なくとも日本語圏では見かけない、ポケモン人工知能で解くネタを発表することにしました。 7月19日が応募締め切りだったので、それまでに発表内容の骨子ができれば、と思っていたのですが、技術的に難航して達成できませんでした。 今回の話題は既存のソフトウェア等の使い方の解説ではなく、学術論文に近い新たな技術の開発になるので、技術部分で失敗すると語るべきものがない事態に陥ります。 それでも「出したいから出す、締め切り駆動だ。」という精神で応募してしまいました。 人生いつ死ぬかわからないし、自分自身はいくら気を付けていても親族の介護などどうしようもない事態が起きて好きなことができなくなるかもしれません。 最悪のケースでも前年末の記事を改訂して印刷すれば体裁は整えられるので、応募しない理由がありませんでした。 一方で即売会に出展するというのは初めてのことがたくさんあるので、本のコンテンツのクオリティは頑張るものの、他の部分は保守的に進めました。

研究開発

今回の本の話題は、ポケモンバトルの戦略を人工知能技術で開発するというものでした。 まずはゲームのシミュレータ開発から始めました。データ構造の検討、技の仕様の情報収集など結構骨の折れる作業でした。 イベント当日に複数の訪問者から、「シミュレータを作るのが大変だったでしょう」と言われましたがまさにその通りです。

シミュレータができた後、そこに乗っけるAI部分の開発を行いました。 提案手法がそもそも良い成績を出せるのかというところが非常に不安でした。

執筆

8月23日、一部の実験が完了し、最低限語るべき内容ができました。本の執筆にとりかかりました。 取り急ぎ、カタログに印刷されるサークルカットの納入が8月末までということだったので、Windowsのペイントで作りました。 目を引くイラストを載せている人も多いのですが、私にはそういうスキルは欠けています。 文字情報だけにしても、何が書かれた本なのか最低限わかるように注意して作りました。 PowerPointなどで作れるともう少し楽だったのですが、ピクセル数でサイズが決まっているためうまく作れませんでした。 ラスタ画像の作り方に関するスキルをいずれは磨いていきたいところです。

9月3日、本文執筆開始。マークアップ言語として、技術系同人誌に向いていると思われるRe:VIEWシステムを使うことにしました。 ひたすら文字を書いて、9月19日に9割方執筆が完了しました。 一度書いただけだと論理関係が破綻していたり誤字脱字の嵐だったりするので、紙に印刷してファミレスで赤ペンを走らせました。 漢字変換のミスは商業出版でもよく見かけるので、この作業は非常に重要です。

その後図版などを作成し、最終調整をしました。図の位置がずれる問題が生じていたのですが、Re:VIEWコンパイル組版)環境としてセットアップが楽なdockerを使用していたため、ちょっと面倒な事態に陥りました。 コンパイルするたびにソフトウェアパッケージをインターネットからダウンロードするようになっており、レイアウトのパラメータを1個変えて試行錯誤するたびに1分程度かかったり、パッケージのサーバが一時的に落ちて作業不能になったりしました。環境は要改善です。 最終的にできたPDFをコンビニのプリンターで印刷し、数式や図が消えたり文字化けしたりしないことを確認しました。 最後に表紙をWordで作りました。例によってかっこいいイラストは描けないので主張点の箇条書きという形になりました。 イベント当日に周りを見るとカラー表紙が多く、見劣りした感じは否めません。

入稿

印刷所への入稿は私にとって未知の領域です。印刷所の選定ですが、印刷物の直接搬入ができる「ねこのしっぽ」か「日光企画」から選ぶことにしました。 Webサイトが初心者にわかりやすかったねこのしっぽを選びました。 印刷数を検討しました。9月20日時点で、技術書典サイトの被チェック数が25でした。twitterで過去のイベントでの売れ行きについて調べたところ、50冊は売れそうという感触でした。 印刷方式としてオンデマンドとオフセットがありましたが、オフセットが金銭的にお得なのは300部以上なので、オンデマンドにしました。 「オフセ本」という響きには憧れるのでいつかオフセット印刷にも挑戦したいですが、ジャンルを変えないと無理でしょう。 印刷部数の入力で、最初に予定した50部に見本用などの予備を足した60部にしようと思ったのですが、50・80・100という数でしか受け付けられなかったので80部にしました。 なお、当日はそのうち70部頒布しました。 見積もりの段階でページ数が確定している必要があるようでした。漫画本だと早い段階で決定する項目かと思いますが、TeXベースの技術書だと容易に変動するので実質的に原稿が完成した後でないと見積もりができません。 表紙・本文ともモノクロ印刷にしました。

表紙をどうやって入稿すればいいのか最初わかりませんでした。背表紙に印刷したり、紙の端まで色を塗るような場合には表紙・裏表紙がつながった大きな画像として作る必要があるみたいです。 今回はそこまで手が出せませんでしたが、単純に表紙・裏表紙に相当するB5サイズのPDFをWordで作り、hyosi_omote.pdf, hyosi_ura.pdfという名前で入稿すれば期待通りの印刷になりました。 本文はRe:VIEWで作成したPDFをそのまま入稿しました。印刷方式によりページ数が2の倍数または4の倍数である必要がありますが、今回は偶然はじめから条件を満たしていました。 紙質などの選択もできたのですが、よくわからないので標準的なものを選択しました。9月22日に入稿完了、10%割引期間内でした。

準備

本の入稿が終わり、それ以外のイベント準備を始めました。 本自体は当日会場へ直接搬入なので、中身の確認はできません。印刷が想定通りできていることを祈るだけです。 頒布の計画として、紙の本が売り切れておしまいになるのはもったいないので、電子版を用意することにしました。 一般参加側として、何度となく完売・救済策なしという自体に遭遇して残念な思いをしたのでそういうことが起きてほしくないと思いました。 技術的には、単にPDFをダウンロードするためのURLやパスワードを書いた紙を頒布することで実現します。 配る紙は名刺状のカードにしているサークルが多いようです。 ねこのしっぽの名刺印刷を使おうかと思ったのですが、PhotoShop形式での入稿が必要のようで、PhotoShopは持ってないし使ったこともないので諦めました。 ビジネス向けの名刺作成サービスのカスタマイズの範疇で実現するという手もあると思います。 今回は紙の本を頒布することをメインとして、ほかは最低限で済ませることにしました。 そのため、しおり状の普通の紙に必要な情報を書いたものを用意しました。 コンビニで印刷し、カッターで裁断しました。この方式なら最悪当日に不足しても生産可能です。

頒布価格等の設定ですが、読者の立場に立って考えました。 46ページ、モノクロの紙の本であれば500円が妥当なところです。 電子版を付けるのは特にコストがかからないので、利便性のために紙の本を買ったら電子版も入手可能という形にしました。 一方で紙の本は持ち帰るのが面倒なので電子版だけのほうがいい、という人もいると思いました。 そうしたときに、電子版単体が紙の本と同じ価格だと、損をした気分になるかと思い電子版は少し安くすることにしました。 特に紙の本が完売した後で選択肢がない場合は顕著です。 1冊当たりの印刷コストが250円程度であることを考慮し、紙の本+電子版は500円、電子版単体は300円という設定にしました。

頒布物以外に、100均でテーブルクロスや本立てなどのグッズを購入しました。また、twitterで数ページ分の画像と共に告知を行いました。 この辺の準備に関する情報は技術同人誌を書こう! アウトプットのススメを参考にしました。

当日編(執筆中)に続きます。

技術書典5 ヤマブキ計算所(え32) おしながき

2018年10月8日、池袋サンシャインシティにて開催される技術書典5での頒布物をお知らせします。

配置は「え32」です。サークル配置図はこちら

頒布物は技術書1点です。タイトルは「PokèAI ~人工知能の考えた最強のポケモン対戦戦略~(1)」となります。 表紙込み46ページで、紙の冊子は500円、電子版ダウンロードコードのみは300円で頒布します。 紙媒体は途中で売り切れる場合がありますのでご了承ください。 支払いは現金・かんたん後払いに対応しています。 また、会場に来られない方のため500円でオンライン販売(電子版のみ)を予定しております。

ポケモンバトルの戦略を人工知能に考えさせたらどんな戦略が生み出されるか?」というテーマで、 用いる技術の概要、ポケモンに応用する手法の提案および実装の解説、実験結果として生み出された戦略の考察を掲載しています。

今回は第1巻ということで、ゲームのルールは初代(赤・緑バージョン)に準拠し、ポケモン交換なしの1対1のバトルでの戦略を模索します。

表紙・目次および、各章から1ページずつこちらに載せておきます。

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皆様のお越しをお待ちしております。

技術書典5 配置決定

2018年10月8日開催の技術書典5における当サークル「ヤマブキ計算所」の配置が決定しました。場所は「え32」となります。

ポケモンバトルの戦略を人工知能に考えさせるとどうなるか、というテーマで本を出します。 ルールは初代(赤・緑)ベースで、交換なしの1対1バトルに絞ります。 まだ技術開発が済んでいないため暫定的ではありますが、次のような内容を予定しています。

ある程度ゲームをやりこんだ人間が考える戦略には遠く及びませんが、できるだけヒントを与えずにどこまで強くできるのかが見所です。

技術書典5 当選しました

2018年10月8日に開催される技術書オンリーイベント技術書典5」に当選しました。

サークル名は「ヤマブキ計算所」です。 内容は、ポケモンバトルの戦略を自作の人工知能に考えさせるというものを予定しております。昨年末にWebで公開した内容の続編となります。

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現在アルゴリズムの研究を進めており、その結果は随時このブログにも掲載していきます。紙媒体の同人誌配布は初めてですが、どうぞよろしくお願いいたします。

世界コンピュータ将棋選手権でのAWSクラウド利用法(WCSC28)

世界コンピュータ将棋選手権では、コンピュータのハードウェアに関する制限がなく、開発者が用意したコンピュータを利用して対局を行います。 最近ではAmazon Web Services (AWS)をはじめとしたクラウドを利用することが多くなっています。買えば数百万円する高性能マシンを1時間当たり100円程度で借りることができるため、大会のように短期間だけ強力な計算リソースが必要な時に役立ちます。

クラウドの使い方はネット上に多数記事があるので適宜検索してもらうとして、選手権でクラウドを使うための追加情報を書きたいと思います。 ここから先はクラウドのうちAWSのEC2に絞って解説します。

AWSへのユーザ登録、EC2でインスタンス起動ができるところまではすでに済んでいるものと想定します。

  • リモート参加申請
  • SSHでの指し手送受信設定
  • 会場端末の準備

全体の接続図は次のようになります。 f:id:select766:20180509202848p:plain

リモート参加申請

選手権でクラウドを用いるためには、原則として参加登録時に「リモート参加」を申請しておく必要があります。

選手権では、本来会場内に設置したコンピュータで将棋の思考を行うのが標準です。 リモート参加の申請とは、簡単に言えば、対局中に会場内のコンピュータからインターネットに接続する権利を得るということです。 会場に行かずにネットで完結するということはできない ので注意してください。リモート参加の場合でも、会場に設置するコンピュータ(以下、端末と呼ぶ)が必要になります。

この申請をしておくことで、有線インターネット接続が可能となります。

SSHでの指し手送受信設定

この項目はやねうら王など、USIプロトコル対応のエンジンをクラウド上で動かし、対局サーバとの通信(CSAプロトコル)には会場に設置した端末上で将棋所を利用する場合の設定です。

USIプロトコルSSH経由で通信が可能なので、これを用いるのが便利です。SSH自体は極めて一般的なのでググってください。

クラウドのOSがLinuxなら、デフォルトでsshサーバがつかえると思います。 私はWindowsサーバを使いましたが、Win32 OpenSSHを活用しました。 必要に応じてOSのファイアウォールAWSのSecurity Group(ポート22を解放)を設定してクライアントからsshサーバに接続できるようにします。

端末側はsshクライアントを入れておきます。Linuxなら標準で入っているでしょうし、WindowsならGit for Windowsでインストールされるツールが使えます。 Git for Windowsをインストールすると、C:\Program Files\Git\usr\bin\ssh.exesshクライアントプログラムとして使えます。

また、公開鍵認証などの設定をして、パスワードなしで対象端末にログインできるように設定してください。USIコマンド以外の入力が必要だと、将棋所から使えません。

sshの設定とクラウド上でのUSIエンジンの設定ができたら、将棋所から使えるように設定します。

Windows端末の場合、以下のようなバッチファイルを作成します。

yaneuraou.bat

"C:\Program Files\Git\usr\bin\ssh.exe" Administrator@123.45.67.89 "C:\Users\Administrator\Documents\yaneuraou\YaneuraOu-user.exe"

123.45.67.89は、クラウド上マシンのIPアドレスです。立ち上げなおすと毎回変わると思いますので、その都度書き換えが必要です。 "C:\Users\Administrator\Documents\yaneuraou\YaneuraOu-user.exe"の部分はUSIエンジンの(クラウド上の)パスです。クラウドのOSがLinuxなら、/home/ec2-user/yaneuraouのような指定になると思います。

このバッチファイルをダブルクリックして、usiとタイプしてEnterを入力しましょう。optionなどの行が出力され、最後にusiokが出力されればOKです。

初回接続の際はThe authenticity of host...というメッセージが出て、yesと入力する必要があるかもしれません。この状態だと将棋所から使えないので注意してください。一度済ませれば2回目以降は出ないはずですが、クラウドIPアドレスが変わると再度聞かれます。

将棋所のエンジン管理画面から、このバッチファイルをエンジンとして追加します。拡張子exeのファイルしか一覧に出ませんが、ファイル名のところにyaneuraou.batと手入力すれば通ります。これでエンジン登録に成功すれば、クラウド上で動くUSIエンジンを手元の端末から使えるようになりました。

エンジン固有の設定をしたのちLesserkai等と対局させて、動作確認をしましょう。

会場端末の準備

冒頭の図で示した通り、会場で通信の仲介をするための端末が必要です。計算能力はほとんど必要ないので、軽いノートPCが便利でしょう。この中に、将棋所、SSHクライアントをインストールしておきます。

必要なもの

  • ノートPC(有線LANのポート2つ)
  • LANケーブル2本(長さ3m以上)

無線LANは使えず、有線LAN(イーサネット)のポートが 2つ 必要となります。1つは会場内の対局サーバとの接続、もう1つはインターネットへの接続に使います。1つのポートで兼用することは原則できません。2つLANポートがついているノートPCはほとんどないでしょうから、USB等で増設する必要があります。

私はLANポートなし、USB1つのタブレットPCを使ったので、2つLANポートを増設しました。USBハブ付きLANアダプタ EDC-GUA3H-Wと通常のUSB-LANアダプタETX3-US2を階層的につなぐことで乗り切りました。ただし、ETX3-US2はUSBハブ経由での接続は保証しないとなっているため、自己責任です。

会場側に用意されているのはスイッチングハブまでで、接続用のLANケーブルが各ネットワーク用に必要で、合計2本持参する必要があります。

IPアドレスの設定ですが、対局サーバとの通信ポートには主催者から指定された固定IPアドレスを設定する必要があります。 http://121ware.com/qasearch/1007/app/servlet/qadoc?QID=018061などの情報を参照して設定できるようにしておきましょう。WCSC28では、IPアドレスは"192.168.20.x"(xはユーザにより異なる)、サブネットマスクは"255.255.255.0"、デフォルトゲートウェイはなし(閉じたネットワーク)、DNSサーバもなしでした。インターネット側は無設定でつながりました。

会場に着いて接続ができたら、EC2のインスタンスを起動します。インスタンスIPアドレスが判明したら、先述のyaneuraou.batの該当部分を書き換え、接続を確認します。Lesserkai等との対局を行ってエンジンが正しく動くことを確認しましょう。最後に、他の参加者にお願いして対局サーバを介したテスト対局を行いましょう。

注意事項

クラウド特有のリスクがあるのでご注意ください。

  • インターネット接続は無保証です。接続できずに不戦敗という事態もありえないわけではありません。
  • AWSの場合東京より海外のデータセンターのほうが安いですが、その分遅延時間が増えることに注意しましょう。
  • AWSのリソースも有限なので、所望のインスタンスが他の人に占有されていて立ち上げられないという事態がありえます。

クラウドの利用は設定が面倒だったり、特有のリスクもありますが、強力な計算能力でソフトの能力を最大限発揮させる有効な手段です。検討してみてはいかがでしょうか。

第28回世界コンピュータ将棋選手権に参加しました

2018年5月3日~5日にかけて行われた、第28回世界コンピュータ将棋選手権(WCSC28)に参加しました。 大会中の記録です。技術情報はまた別の記事で書きます。

結果を述べると、1次予選で5勝3敗(1不戦勝含む)で15位となり、2次予選には進めませんでした。

大会概要

世界コンピュータ将棋選手権はコンピュータ将棋協会(CSA)主催の将棋AIの大会です。

今年は前年に引き続き、神奈川県川崎市川崎市産業振興会館にて行われました。

大会の特徴は使用するコンピュータに性能・台数・設置場所(インターネット経由で大学やクラウド上の計算機も使用可)に制限がないことで、統一ハードウェアで行われる電王トーナメントとの大きな違いになっています。 逆に言えば、自前でコンピュータを用意しないと大会に出られません。

5月2日(準備日)

大会前日の夕方から会場入りすることができます。

ねね将棋はクラウド上のマシンで思考するので、会場では通信用タブレットPCのみを用いました。初参加ということもあり、万全を期して前日に配線と動作確認をしておきました。

設営済みの状態はこんな感じで、広々としています。 f:id:select766:20180507215859j:plain

5月3日(1次予選)

ねね将棋は選手権初参加なので、1次予選(5月3日)スタートです。

AWSクラウド上のマシン(p3.16xlarge)を立ち上げ、対局を行いました。

p3.16xlargeはNVIDIA Tesla V100という最先端GPUが8台搭載されたマシンです。まともに買うと1000万円以上します。 1時間当たり27ドル、約3000円です。1局対戦するごとに3000円払うのは精神が削られますが仕方ありません。

OSはWindowsにしました。無料のLinuxとくらべ値段が少し高くなるのですが、プログラムをLinux対応させてデバッグする気力がありませんでした。 リージョンはバージニア北部です。東京のほうが通信遅延が少なくちょっと得なのですが、値段が高いです。

こんな感じの請求になりました。 f:id:select766:20180507215625p:plain 前の月にデバッグ等で動かしていたので、あわせて5万円ぐらいかかりました。

各対戦結果です。

相手 勝敗
SilverBullet 〇(不戦勝)
Hefeweizen ×
名人コブラ ×
ツツカナ ×
隠岐
オッズの魔法使い
ichibinichi
dainomaruDNNc

SilverBullet戦は、相手の準備ができていないということで不戦勝となりました。

ツツカナは最初の2戦を準備ができていないため不戦敗となっていました。その後準備ができ、ねね将棋は惜しくも敗れました。 第3局終了時点の勝ち数で並んでいたということで対戦になりましたが、結果的にはこの負けが致命傷でした。

不戦勝からの3連敗で、一度も実力で勝つことなく折り返しました。なかなか重い空気でした。

終戦のdainomaruDNNcはdlshogiライブラリを使っており、Deep Learning勢の対決となりました。70手目まで互角の緊迫した戦いをねね将棋が制し、5勝3敗、勝ち越しとなりました。 f:id:select766:20180507221142j:plain

5勝3敗のチームのうち上位2チームが2次予選に進めるという状況でしたが、ソルコフ(対戦相手の勝ち数の合計)で劣り、ねね将棋は1次予選敗退が決まりました。 同じく5勝3敗のdlshogiは2次予選に進むことができ、Deep Learning勢としては初の1次予選突破になったと思われます。

昨年11月の電王トーナメントでは3勝5敗でしたので、成績は上がりました。floodgate上のレーティングも1700から2800まで上がったので実力通りの結果というところでしょうか。

大会中は他の開発者といろいろな情報交換ができました。特にdlshogiの山岡さん、broadenの中屋敷さんなどDeep Learningを利用した方々との交流でいろいろなアイデアが得られました。 まだまだ成績が伸ばせそうなので、これからも開発を続けていきたいです。

最後に、大会運営の方々、また対局・交流してくださった開発者の方々にお礼申し上げます。